2001.3
  あこがれの先生に聞きたい・あんなことやこんなこと、
  大好きな作品への疑問・質問をまとめてぶつけ、
  あまつさえ先生の素顔にせまってしまおう!
  というこの欲張り企画。
  今回のお客様は、諏訪緑先生です!
●「諸葛孔明 時の地平線」について

Q1.このお話を描こうと思われたきっかけはなんですか?
デビューのころから描きたかった題材です。私が、テレビや物語で見知った諸葛孔明は、神秘的で、森羅万象に通じていて、そのくせ妙に現実的で、どこか生真面目な公務員みたいなところがあって…とっても魅力的でした。


Q2.あの時代の中国のどんなところに惹かれますか?
あの時代というと、人一人が生まれて死ぬまで戦争状態ですよね。暴力と欲で世の中しっちゃかめっちゃか。その真ん中で生きていると、「世の中ってこういうものなんだ」と、私なら思うと思うんです。でも歴史って不思議で、ここまで崩壊している秩序が、時間の流れで、また別の秩序を生み出すんですね(それが完璧なものでないにしても)。暴力や欲とはまた別のものが、人間の社会を変化させる要素としてあった…と思えるところでしょうか。


Q3.「諸葛孔明 時の地平線」の登場人物は、ほとんどが実在の人物。しかも三国志といえば、過去に何度も小説・漫画・映像化されています。何かお好きな作品はありますか?
NHKの人形劇「三国志」。あの作品の諸葛孔明は絶品! ほのかに香る色気に酔っ払った、ファンの一人でした。


Q4.先生の描かれる孔明や曹操は、これまでのイメージを打破するものですが、あの独自のキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか?
打破しているのでしょうか? 自分が描けるキャラクターを使って、なんとか描いているという感じですが。本当は、あの2人、どういう人達だったのかなあと、よく考えます。


Q5.孔明と士元のコンビは、『玄奘西域記』の玄奘とハザクを思わせます。孔明と玄奘は髪型も似てますし・・・ひょっとして先生のお気に入りキャラですか?
はい。これしか描けないと言われつつも。ボケとつっこみがいなければ、どうも落ち着かないんですね。


Q6.ついに出た!という印象の劉備ですが、「三顧の礼」や「水魚の交わり」のエピソードは出てくるのでしょうか。(PF1月号では「夜郎自大」も独自の解釈をされてましたね)
出ます。今後は、三国志好きな人には馴染みの場面が多くなると思います。


Q7.先生の作品も、ロングインタビュー1・2回めの木原先生や神坂先生と同様に、服装や時代背景などの資料探しが大変そうですが?(どうされてますか?)
神田の中国図書専門の店で買い求めたり、中国に行ったときに、買ったものを参考にしていますが。家具や民家の間取り、着物の種類や質感、農作物、宮殿(本当にこの時代のものを見つけるのが大変)。調べが追いつかず、自分流にアレンジしているものが多々あります…ので、あまり信用しないでくださいね。


Q8.中国に取材旅行に行かれたそうですが、一番印象深かった場所・出来事はなんですか?
西安市。明るい陽射しと、広々とした大通り、そして黄色い砂ぼこり。この中を玄奘も歩いたのかと思うと、やはり感動するものがありました。玄奘の遺骨が納められている興教寺は、西安市の郊外にあるせいか、あまりほこりっぽい感じはなく、むしろ木々がたくさん茂っていて、みずみずしい雰囲気のあるところでした。こちらに思いこみがあるせいか、長いこと人に大切にされてきた場所のように感じられ、なぜかしら嬉しくなりました。

●メール・コーナー

Q9.巽銀次郎さんより「私は諏訪先生のおかげで中国史が好きになりました。先生が中国史を好きになった一番のきっかけは何ですか?」。
やはりNHK「三国志」だと思います。もともと人形劇は好きなんです、「サンダーバード」や「南総里見八犬伝」など・・。作り手は生きていないものに表情をあたえ、見る方は、生きていないものに表情をみてしまう。(漫画にも、通じるところがありますよね)。人形劇「三国志」の、最小限で、細心の注意を払われた表情に、こちらの想像力は最大限に刺激されてしまい、私の中の中国観はすっかり塗り替えられてしまいました。


Q10.ブトチュウさんより「先生の書かれるキャラクターは(特に男性)は素敵なんですが、ひょっとして先生の身近にいる人ですか?」。
身近にはいないと思いますが、曹操の髪なんかは、エド・ハリスをイメージしたかな?と思います。安期生の髪は、ジミー・ペイジか、イエモンか・・と思います。ハザクなどは、20年来の親友がもともとのイメージですが、見た目はああではないですね。女性ですし。


Q11.みどりさんより「最近、『うつほ草紙』を読み返し、心のあり方について気がつかされました。--人にとって大切なのは相手を思いやる愛なのだ。-- 虚無にとらわれると、破滅にいたるのだ。登場人物の台詞から、諏訪先生の志を感じます。登場人物の台詞は、どのようにして考え出すのでしょうか?ヒントにしている本や、大切にしている信条があったら教えて下さい」
一生懸命、絞りだしています。手塚治虫先生の「火の鳥」や萩尾望都先生の「ポーの一族」は、心の支えです。
湯浅泰雄先生の「玄奘三蔵」は、緻密で豊か。勝った負けたに血道をあげる学者とは一味違う、学者魂があり、感動と尊敬を感じています。


Q12.momotaさんより「『玄奘西域記』から先生の作品が大好きで、とても楽しませてもらってます。友人と知らない土地を旅したくなるようなワクワク感があってとても魅力的です。先生の作品に登場するハザクや意期など、ちょっとひねくれてるけど、いいヤツなキャラクターはどうやって出てくるのでしょうか。また先生が、ご自身に近いと思われるキャラは、今までの作品の中でいらっしゃいますか?」。
それぞれに自分の分身だと思いますが、近いキャラといえば、デビュー作の、シータかな・・。あとは、それぞれのシリーズの主役級キャラは、やはり自分に似ている(ああ、はずかしい) と思います。逆に、遠いキャラと言えば、プラジュニャーカラや安期生かな…


Q13.ななしさんより「先生の作品っていつも、はっとするような、思想が織り込まれてますが、哲学をかじられた事ありますか?」
哲学や思想の本は、ほとんど読んだことがないです。宗教系の本は、玄奘を描いている時にけっこう読みましたから、影響を受けているとしたら、そのあたり? でも、本格的に勉強されている方から見たら、我流にしか見えないと思いますし、実際、我流だと思います。


Q14.蛞蝓ノ介さんより「先生の作品の中でも、特に短編『B型を狩れ』が好きです。あの作品を読んでいるとヒヤヒヤとします。何故なら小生はB型だからです。あの作品を他の血液型の方が読むとまた、感じ方がちがうのでしょうか?。ずばり先生にお聞きしたいのです。B型の人は苦手ですか?。」
苦手ではありません。…というか、あの作品の題名は、学生時代に気の合う仲間(B型)と、話している時にできたものなんです。私はB型の友人も多いですし、好意的に思っていますが、気にさわっていたら、ごめんなさい。

●近況など

Q15.パソコンやインターネットはされますか?
3月から始めました。実はこれを書くのがパソコン初仕事です。


Q16.先生まんがを描くときにつかう道具・材料は?
ケント紙、ゼブラのGペン、丸ペン、墨の華。


Q17.いま何かコっていることはありますか。
パソコン?犬?


Q18.最近聞いている音楽は何でしょうか。
平井堅、矢井田瞳、宇多田ヒカル、ヨーヨー・マ、イエモン、ワイゼンベルク、氷川きよしなど。


Q19.最近「かっこいい!」もしくは「美しい!」と思われた男性は?
大泉洋(美形ではないと思うけど、寅さんのように魅力的。)、熊川哲也、豊川悦司。


Q20.ファンの方々に一言!

いつもありがとうございます。読み手の、より面白い作品をもとめるきびしい目と、漫画を好きだという熱い心と、長い目で育ててやろうという太っ腹に支えられていると思います。そしてまた、「もうこりゃダメだ」という時の私を、救ってくれたのも、愛のこもったお便りでした。感謝してます。

2001.3.15 諏訪 緑


諏訪先生、お忙しい中ありがとうございました!

次回のお客様は、萩尾望都先生です。