2002.1
  あこがれの先生に聞きたい・あんなことやこんなこと、
  大好きな作品への疑問・質問をまとめてぶつけ、
  あまつさえ先生の素顔にせまってしまおう!
  というこの欲張り企画。
  今回のお客様は、さいとうちほ先生です!


Q1.現在連載中の「アナスタシア倶楽部」(単行本1巻が発売されました)は、さいとう先生のプチフラワー初登場作品になりますが、プチフラワーで連載されている感想はいかがですか?
憧れの先生たちの多いホンなので、一種独特の緊張をします。


Q2.三遊亭さんからです。ロシア革命とロマノフ王朝の謎が背景となっていますが、ニコライ2世の第4皇女アナスタシアに注目したのは、やはり宝塚歌劇団の『彷徨のレクイエム』(フラワーコミックススペシャル「銀の狼」収録)がきっかけなのでしょうか? また、どこまでがノンフィクションで、どこからがフィクションなのでしょうか?
小さい時、イングリット・バーグマンの映画を観て、なんとなくアナスタシアの事は知っていたのですが、やっぱり「彷徨のレクイエム」の漫画化のためにアナスタシアの本を読みあさったことがきっかけになりました。ニコライ2世一家の銃殺やアナスタシアの逃亡、「アナスタシア裁判」といわれるものについても色々な説が飛び交っており、90年代にロシア政府が行った一家の骨の埋葬についても本物の骨だったのかどうか異議が唱えられたりして、真相は今だ定まらずといった感じですよね。


Q3.セカンド・ガールさんからの質問です。アメリカでアンダーソン夫人となったアナスタシアですが、どんな人だったと思いますか? ちょっと漠然とした質問で申し訳ありません・・・・・・。
数冊の本を読んだだけですが…
「本物っぽい」と思った人が多かったからこそ、彼女をアナスタシアだと前提にした本が何冊も書かれ、彼女を保護した王族関係の人も多かったのでしょう。ただ、彼女が本物だったにせよ本物でなかったにせよ、不幸な体験が彼女の革命後の性格や記憶などに悪影響を及ぼしたのだろうなとは思います。かなり偏屈なおばあさんだったようで…。


Q4.サトミさん他、意外と(?)多かった質問です。主人公のカムイはとてもかわいらしいのですが、どうして「カムイ」という名前なのでしょうか? ロシア関連かと思いきや、アイヌ関連だったりするのでしょうか?
ひらめきで、いつも決めちゃうのですが…。主人公は男の子みたいな名前でカタカナがいいなぁ、それでなにか神々しい意味のあるのがいいなぁ…と思ったらアイヌ語で「神」の意味のある「カムイ」になっていました。


Q5.MSさんからの質問です。・・・・・・端正麗美にして謎の男瀬名卓斗・・・・・・、惚れてしまうのですが彼はナニモノですか? ネタバレ大歓迎です!(笑)
惚れてくれてありがとうございます。彼の正体ですか?これから考えるとこだったりして…。


Q6.久美子さんからです。ロシア民俗に興味を持っています。「サプライズ・エッグ」のマトリョーシカのエピソードに感動しました。子孫繁栄や子供の成長の願いがこめられ、家内安全の願いがあると言われるマトリョーシカ。なのに一家惨殺の憂き目にあったニコライ2世一家が気の毒でなりません。また、深みのあるお話を楽しみにしていますので、頑張ってください。
ありがとうございます。
ニコライ2世はとても家族を大切にした皇帝で、一家も堅実で質素といっていいような暮らし方をしていたようですよね。(世界で一、二を争うような大金持ちの皇室でしたが)普通の時代だったら充分、合格点をさしあげられる王様だったと思うのですが、不運でした。温厚な性格で、王妃の方が影響力が強く、跡継ぎの王子が難病だったとこまで、どことなくフランス革命時の王様、ルイ16世に似てるような気が…。
ロシアはごっつ寒いとこですが、昔からわたしにとってロシアは憧れの地です。たぶんバレエとかクリスマスとかおとぎ話的な金色のイメージを小さい時植え付けられたせいでしょう。まだ私自身行ったことがないのも、ポイント高し、です。


Q7.M利さんからの質問です。『アナスタシア倶楽部』いつも楽しみにしています。ところで、東京の某TV局で放送している「開運!なんでも鑑定団」は見ていらっしゃいますか? ついでと言ってはなんですが、いつもご覧になっているTV番組などがありましたら、教えてください。
「開運!なんでも鑑定団」うん。観てますよ。毎週じゃないけど「あ、やってたんだっけ」と思い出したときは観ます。うちにもなんか古いお宝ないかなーと思いますが、なにもありません。チェ…。
TVはよく観てて、うちには10台もTVがあります。お風呂でも観るし…。
アシスタントさんが入ってる仕事の時は、一日中、流してます。そういう時は、朝は8チャンネル、ワイドショーは6チャンネルと、毎日同じ番組を観てる(というか正確には聞いてる。目は原稿の上なので)時間の経過が自然と把握できるしね。あ、でも5分番組の「ペット百科」だけは原稿から目をはなしてじっと観ちゃいます。かわいい猫が出てくるし…。
ハマれるドラマがあるときは、ビデオ用意して絶対逃しません。最近ハマったのはフランスで作られた4回シリーズの「レ・ミゼラブル」。豪華キャストですごくちゃんと作ってあって泣けました。私はイヤミな警視ジャベールを演ったジョン・マルコビッチのファンなので、特に…。


Q8.匿名希望さんからです。『円舞曲は白いドレスで』からのファンです。サジットよりも将臣が好きで、湖都がサジットと結ばれたときは歯がゆい思いをしました。が、その後『白木蘭円舞曲』で念願かなって溜飲を下げました。その後インド旅行をして、イギリスがインドから独立していく過程をたどってみたのですが、インドという国の存在感に圧倒されました。さいとう先生は取材旅行とかなさいますか? どんなところを見てくるのでしょうか?
できれば毎回、取材旅行には行きたいのですが、けっこうどこを舞台にするか決めてから、その原稿を書くまでの時間が短く、とても行っていられないことが多いのです。だって夜に舞台をモンゴルにすることにやっと決めてネームが終わり、翌朝にはアシスタントさんが来てモンゴルの風景描いてたりすることがある…。そういう時のために、資料はゴッソリためこんでますが…。
運良く事前に取材に行けた時は、トイレとかポストとか窓とかドアの蝶番いとか、普通の人が絶対撮らないようなところの写真ばかり撮っています。後は、ぼーっとして想像をめぐらします。200年も300年も昔、ここに住んでた人は、何を感じていたのかなぁ、と思います。その土地を、空気をリアルに感じることが出来た時には取材が生きます。要は、「そこにいるつもりになれる」と思いこむことができるかどうかが、私にとっては勝負です。


Q9.コミ娘さんからです。『もう一人のマリオネット』は、役者と脚本家・演出家との本質的な関係を鮮やかに浮き彫りにした作品だと思いますが、さいとう先生が舞台に関わるとしたら、役者と脚本家・演出家のどちらをやりたいですか?
全部おもしろそうだなぁ。でも役者は高校の演劇でやったことありますが、ちゃんと出来ませんでした。自意識がじゃまして役になりきれなかったのです。でも今ならやれるかも。恥かいても平気だもん。


Q10.Coccoさんからです。かなり長いさいとう先生のファンさんです。さいとう先生が描く、珈琲色・褐色の男が好きです・・・・・・。サジットやディオスなどなど、オリエンタルムードを持つ男性を描いたらさいとう先生に優る人はいないと思います。男性を魅力的に描く秘訣はありますでしょうか?
ありがとうございます。
柔らかな体の線(でも中身は筋肉)と物欲しそうなまなざしに、特に気を使っています。それに、男の人の色気は「たたずまい」かと。エレガントな動きを想像させる絵を理想に描いていますが難しいです。


Q11.美鈴さんからです。光と闇、理性と本能などなど、さいとうちほ先生の描くキャラクターには「二面性」があると思うのですが、作品作りにおいて意識していらっしゃるのでしょうか?
い、いえ。そんな…。意識はないのですが、キャラに入れ込みはじめるとそうなってしまうようです。たぶん、自分にそういう二面性があるのではと思ってたりして…。


Q12.西条さんからです。さいとうさんの描くキスシーンがロマンチックで好きです。なにか元ネタがあって研究していらっしゃるのでしょうか? よろしくお願いします。
ラブシーンを描くことが多いので、なるべく「ぐっとくる」写真や映像をストックしておきます。映像の場合は、連続写真にしてとっておくことも。映画も多いですが、バレエの場面も多いです。ダンサーはポーズと体がきれいな上に、セリフ無しで感情のほとばしりを体に表情として出せるのです。素晴らしいです。


Q13.葉子さんからです。短編の秀作が揃っている『恋物語』をよく読み返します。『恋物語』の中でさいとうちほ先生のお気に入りを教えてください。
「金のモザイク」「キューピッドの降りた夜」「シャングリラの庭で」「暁の姫君」「死が二人を別つまで」…あんまりいっぱい描いたんで良く覚えてないんですが…。絵が充実してる作品が比較的、思い返しても胃がシクシクしないかな…。あ、共通項はみんなヒーローが黒髪?(違うかも)


Q14.ミモリさんからです。『花冠のマドンナ』のチェーザレが1番好きでした。さいとう先生は、ご自身の作品の中でどの男性キャラが一番好きですか?
私もチェーザレかも。いい人描いてるとストレスたまってくるのですが、悪い人なので描いてて気持ちイイです。目つき悪くて、クールな悪役って好きです。それに、黒髪だ…。


Q15.吉沢さん他の方から、多かった質問です。ともかくさいとうちほ先生のキレイな絵が好きです。カラーも白黒も丁寧で見ていて飽きません。どうしたらあのような絵が描けるようになるのか教えてください。
どうもありがとうございます。
私も昔からきれいで丁寧な絵が好きでした。ああいう風に描きたいなと憧れて、よく好きな作家さんの絵を透かして写して、そっくりに描きました。ペンタッチもそっくりに描けるようにマスターしました。そいでもってそっくりに描いた絵を友だちに見せたら、みんな欲しがって注文が殺到し、ますます技術に磨きがかかりました。
好きなものを見つけたら、そっくり自分のものに出来るまでしつこくしつこく研究して下さい。そしてそれを他人が見て喜んでくれたら、たぶん人を喜ばせる快感が、また技術を磨かせてくれます。
「感動して自分のものにして、人に見せる」この繰り返しを毎日続ければ、きっと自分だけのステキな絵を描けるようになりますヨ。


Q16.さいとう先生は宝塚をはじめとする舞台好きで有名ですが、今ごひいきの劇団または役者さんなどはいらっしゃいますでしょうか?
ここんとこ忙しく、券を無駄にするのがこわくて、あまり舞台を観にいってません。でも、バレリーナのシルビィ・ギエムがクラシック踊りに来たら観にいきたいな。あと、タンゴとかダンスが観たいな、今。宝塚で楽しみなのは、トップコンビが充実してる宙組。


Q17.さらに、映画好きでも有名なさいとう先生ですが、最近オススメの作品はありますでしょうか?
やっぱりこっちも忙しくて、なかなか映画館まで行かれません。そこで思い切って「えやっ」っとばかりにDVD買ってしまいます。(近所のレンタルビデオ屋さんも潰れるし…)それで時々おもいっきり駄作に当たって泣きます。
あ、でも「千と千尋の神隠し」は映画館に行きました。予想外に素直に感動して帰ってきました。いやー、ホントうまいよ。宮崎さんは。


Q18.休日はどのようにお過ごしですか?
休日らしい休日ってあんまりないのですが…。いつも仕事しつつ、その合間をぬってという感じですが。たまっていたプライベートな事柄を片付け、散歩したり買い物しにいったり猫の首輪を作ったり映画観たり…。でも今は、仕事場ひっ越した後なのでインテリアに凝ってるかな。


Q19.Eメールやインターネットはどの程度利用していますか? お気に入りのサイトなどがございましたら、教えてください。
うちのパソコンはマックで、ポストペットでメールのやりとりをしています。インターネットは作品の資料集めの時に、よく役立ってくれています。今日中に棺桶の資料が欲しいという時なんかホント助かりますよ。あとネットで買い物もするな。
趣味では映画や舞台の評判が知りたい時、そっち方面のサイトに行きますね。それで行くかソフトを購入するかどうか決めたりして…。
あと、私自身はホームページを持ってないのですが、友達のページに便乗してちょこっと載せてもらっています。「少女革命ウテナ」でご一緒させていただいた幾原監督の「ikuni web」でうちの愛猫チュチュ太郎のコーナーを持っています。私が撮ったチュチュ太郎写真でネコ漫画つくるコーナーです。仕事の近況や、海外のあちこちのコンベンションに行った時の写真などもあります。興味がおありでしたら是非のぞいてくださいませ。
■幾原邦彦公式サイト:ikuni web


Q20.最後に、ファンの方々にメッセージをお願いします。

いつの間にか漫画家になって20年も経ってしまいました。自分一人で漫画を描いてきたような気になっていましたが、この頃、つくづく回りの人達に支えられて、教えてもらい協力してもらったからこそ、と思います。それはファンの皆さまも同じで、私が描いていったん投げた作品を、読者の方が読んで感じてくれることで、初めて作品は完成するのだと思います。同じ作品でも受け手によって、作品は何通りにも存在して、もはやそれは私の意図したものを遙かに超えてしまう場合もあるのです。そういう幸運な仕事を2〜3割くらいでもいいから出来たらな、と思います。
私は幸せ者だなぁ。これからもヨロシクね。

さいとうちほ


さいとう先生、お忙しい中ありがとうございました!

次回のお客様は、赤石路代先生です。