2002.11

あこがれの先生に聞きたい・あんなことやこんなこと、大好きな作品への疑問・質問をまとめてぶつけ、あまつさえ先生の素顔にせまってしまおう!というこの欲張り企画。
今回のお客様は、田村由美先生です!
<田村由美先生から>
「こんにちは。ま、まずはインタビューが延期になってしまってすみませんでした。
遅ればせながら見ていただけたら幸せです。」
Q1 たくさんの方から頂いた質問です。現在連載中の7SEEDS』は、一度文明が滅んだ後の地球が舞台となっており、かなり壮大な設定で物語が進行していると思います。このような話を思いつかれたきっかけは何でしょうか?
−何かサバイバルな話を描きたいと思いました。陰謀とか犯罪とか殺し合いとかじゃなくて(過去そういうのが多かったので)、ただ生き抜く、という話をば。「今度なに描くの?」と知人に訊かれたので「サバイバル」と答えたら、「いつもサバイバルじゃん」と言われたのですが、そそそそうかなあ?
イントロの場面がはじめ漠然と映像として浮かんでいたので、設定はあとから考えていきました。最終的にこんな設定になったのは、何かが起こる時に誰が拾われて誰が捨てていかれるだろう、主に国家権力に…とそんな疑問が頭にあったからかもしれません。そしてそういうことになった場合誰と一緒にいられたら幸せだろう、ということも。きっかけとは少し違うかもしれませんがそういう始まりでした。
Q2 「7SEEDS」計画には春夏秋冬の5チームがあり、それぞれガイド役込みだと1チーム8人、計40人がいることになります。この40人のキャラクターはすでに決定しているのでしょうか?
 まあまあ決定してる人やおぼろげな人やまったく未知な人がいます。いろんな意味で全員出てくるとも限らないのですが…。なんにしても描き分けが大変だと思われます(困った…。大昔編集さんに、あなたは描き分けができないんだから人が大勢出てくる話はやめなさい、と言われたのですが、いつも守ってません。まあいいや)。いろんなキャラをぜひ楽しみにして下さい!
Q3 ゆりさん他からです。発売中のコミックス2巻の巻末で、『7SEEDS』の主人公は「ナツでもあり、花でもある」と書いていらっしゃいますが、田村先生が気に入っているのはどちらでしょうか? もしくは、田村先生ご自身に近いのはどちらでしょうか? ダブル主人公という設定が新鮮で、楽しく読ませていただいています。今後もお体に気をつけて頑張ってください。
 どちらかが気に入ってないということはないのでどっちとは言えないですー。自分に近いとしたらナツかな。自分にとって耳の痛い話を描いてるような気がします。成長してくれたらいいのですが。
そうそうよく考えるのですが、もし天変地異があって世界が破壊された世界に生き残ったら、自分は何かできるだろうかって。自分のためにも他人のためにも役にたつかなって。ところが何もできなさそうです。漫画描く力って役にたつかなあ? 皆さんはどうですか?
Q4 嵐がだんだんカッコ良くなってきているように思います。花の恋人であり、ナツに最も近い位置にいる嵐は、主人公の2人以上に重要なキャラクターではないかと思いますが・・・。
 嵐はこれからの人だと思います。今はすんなりしたいい人です。あの状況でどう変わっていくのか変わらないのか、わたしも楽しみにしています。気長に見てやってね。
Q5 Michiyoさんからです。春のチームの話を読んでいて思ったことなのですが、ともかく虫が怖いです。新ジャンルのホラー漫画だと思いました。怖さを出すために、特に考えていることはありますか?
 ありがとうー。動物や昆虫パニックホラーになるといいなとちょっと思ってたりしました。でもわたしの絵ではなかなかホラーにならないので手探りでやってます。怖さの出しかたって、他のかたのホラーを読んだり映画を観たりするときに思うのは、主人公がいかに本当に怖がっているかということに尽きるような気がします。それはまた難しいことだとも思いますが。多分今後もいろいろありますので、どうぞよろしく!
Q6 亮子さんからです。『7SEEDS』いつも楽しみに読んでいます。ところで・・・・・・、夏のチームの百舌は怪しすぎます! コミックス2巻の秘密のファイルもとてもうさん臭そうで、なんだかとても気になるキャラクターなのですが、ちょっとネタバレにならない程度で百舌のことを教えて下さい・・・。
 百舌…怪しいですね。うさんくさくしすぎましたね。きっと何かわけありなんです。ここで言うわけにはいきませんが、一つ言えるとしたら百舌というのは夏の季語ではないってことくらいかな。あとは…お楽しみに!
Q7 一番多かった質問です。ずばり、『7SEEDS』は何時・何処まで続くのでしょうか? エンディングは決まっているのでしょうか?
 うーん、終われと言われたら終われるし、続けようと思えばかなり続けられるし、という話だと思います(たとえば外国人編とかね…うそうそ)。今のところいつまでとは決めてません。ぜひ続けられるようにご声援下さい! ラストはだいたいわかっていますが、気が変わることもよくあるので、いつものごとくキャラたちにまかせようと思います。どうぞよろしく!
Q8 揚羽大好きさんからです。田村由美先生が今まで描いてきたキャラクターの中で、一番好きなキャラクターは誰でしょうか? 私はもちろん揚羽ですが、魚住も好きです。できれば、男友達、恋人、結婚相手、愛人など、ジャンル分けしてくださると嬉しいです。
 キャラはみんな好きです。主役クラスも脇も悪役系も。そんな差はないよー。あまり誰が好きとかそうじゃないとか考えたこともないです。それから恋人と結婚相手と愛人は同じ人がいいと思います。愛しい人は一人でいいですー。うーんごめん答えられなくて。もちろん揚羽も魚住も大好きだよ。連載が終わってからも好きでいてくれてありがとう! すごく嬉しいです。
Q9 小学館文庫版の『BASARA』(全16巻)が完結しました。コミックス版(全27巻)との違いはありますか? また、現在振り返ってみて、田村先生にとって『BASARA』はどのような作品でしょうか?
 文庫のカバーは全部描き下ろしです。とっても懐かく楽しい作業だったです。中身は同じですが(番外編とかの掲載順が違う部分もあります)、たむたむたいむ等の読み物やエッセイのページは原則的に抜かれています。時間軸が合わないものがあるのでそういうことにしてるようです。あと、間に合わなくてコミックスには収録できなかった外伝の短編16P「SARADA」が最終巻、16巻に入っています。これはバサラボックスに入ってたもので、見逃したという声をたくさんいただいてたのでぜひこの機会に見てやって下さい。それから文庫にはいろんなかたが巻末エッセイを書いて下さってます。それを読むだけでもかなり面白いと思います。なのでぜひよろしくね。
「BASARA」はわたしにとって良い意味でも悪い意味でも大きいものだったと思いますが、バサラに関して何か描くのは文庫で終わりだと思います。いやー長かったー。
Q10 竹橋さんからです。『BASARA』を読んでいると、「自分も頑張らなければ」という気持ちになるし、「人に優しく接したい」という気持ちにもなります。他にもたくさんの想いがこみ上げて来て、私は『BASARA』から大変な影響を受けたのですが、逆に、田村先生が大きな影響を受けた漫画などはありますか?
 ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです!
自分が影響を受けた作品は年代ごとにそれはもうたくさんいろいろあります。それは絵の面だったりお話の面だったり。その中でも(月並みな言い方ですが)バイブルだと思っているのは、三原順先生のはみだしっこシリーズです。自分も気づいててひっかかってることなのに普段は忘れてる痛い思い、理不尽なことへの叫び、地団駄を踏むようなはがゆさ、大切な人への想い、苦しさ、そんなものが息苦しいほどにぱんぱんに詰まって読むたびに泣かずにいられない。そんな作品ですわたしにとって。今でも。セリフがつきささる。それは痛かったり甘辛かったり。囚われてる考えをひっくり返してくれたり。暖かく嬉しかったり。そうよそうだよそれだよ!と思ったり。漫画ってこうでなければいけないんだと思う。それはほとんど難しいことだけど。わたしにはできないけど。機会があったらぜひ読んでみて下さい。でも最近これを読んだ友人とかは、もっと若いころに読みたかったな、と言っていたのでそういうものなのかなあ。
それとは別にやはり別格なのが「サイボーグ009」と「トーマの心臓」です。大切で愛しい作品です。心が震える。今も。これからもきっと。泣きながら読むと思う。
あっそのほか学生時代は友人たちと漫研を作っていたのでその影響もかなりあります(絵の面ではこれが一番大きいと思う)。激しくうまい人ばっかりだったので。それがなければ漫画家にはなれてないと思うです。
Q11 サラサラさんからです。『炎』と『大地』。とても綺麗なBASARAの2つのイラスト集は私の宝物ですが、田村先生が一番好きなイラストを教えて下さい。私は更紗と朱理が、レモンをかじっているイラストが一番好きです。田村先生が「気恥ずかしいほど、らぶらぶな一枚」と仰っている作品です(笑) よろしくお願いします。
 一番…うーっっむこれも難しいな。カラーイラストを描くのはすごい好きなのでどれもこれも思い入れがあります。思うようにいったりいかなかったりいろいろですが、えーっと、コミックスのカバーはけっこうどれも好きかな。バサラとかも。でっかくて扱いづらかったけど。広い中にこまこまいろんな物が入ってる絵は好きです。ひとつに決められない!ごめん。
Q12 雄三さんからです。田村先生のよみきり作の中で、『ぼくらの村には湖があった』が好きです。少年少女の純粋な気持ちが表現されていて、とても清々しい気持ちになりました。田村先生が、ご自身のよみきり作品の中で一番気に入っているものを教えて下さい。
 ありがとう! 湖…はわたしもかなり好きでした。読み切りはたいていその時にとても描きたいものをわりと思いきり描かせていただいていたのでどれも好きです。中でも「きねづかん」「4人の女」「踊る教室」「霧の家」とかは好きかも。それぞれ何かのコミックスに入ってますのでよかったら見てね。既に文庫になってるのもあります。
Q13 ラッキーさんからです。「ボクが・・・」の龍三郎シリーズが好きなのですが、続きを描く予定はあるのでしょうか?
 実は「flowers」に移った段階でもう龍三郎は描けないのかなと思ってましたが、そうでもないようなので、また描く機会はありそうです。龍三郎への思い入れも大きいしネタもあるので、自分でもぜひまた描きたいと思ってるところです。いつになるかわかりませんが、近い内お目にかかれるかもしれません。もしそうなったらよろしくお願いいたします!
Q14 休日はどのように過ごしていらっしゃいますか?
 たくさん寝て、ビデオを山のように借りて観て、お風呂でゆっくり本を読んで本をしわしわにして、メジャーリーグの試合を観て、時には録画して観て、ひたすらテレビゲームをします。それから通販を頼んだり。動かないのがいかんですね。あとは食い道楽な知人とおいしいものを食べに行ったり。動かず食う。いかんです。まじいかん。身体に危機を感じています。
Q15 旅行に行くとした今何処に行きたいですか?
 京都。行きたきゃすぐ行けますが…。あと船旅かなあ。何日もかけてのんびりと。
列車の旅とかもいいねー。今はどこへ行くかというより誰と行くかが重要かな。大好きな人と一緒に行けたらどこも楽しいもんね。そういえば海外旅行も長らく行ってません。行った中で好きだったのはエジプトとオーストリア。あ、ガラパゴスも。北欧や南極は一度行ってみたいな。
Q16 MLB(メジャー・リーグ・ベースボール)フリークの田村先生にお聞きします。MLBが好きな理由と、好きな選手を教えて下さい。
 まだにわかファンです。でもシーズン中は衛星放送はほとんど毎日観てます。なのでマリナーズメインのア・リーグが主なんですが。まず球場の雰囲気が好きです。罠かと思うような特徴がそれぞれにある球場そのものはもちろん、観客の応援のしかた、反応など見方がとても好きです。本当に感動します。それからプレーももちろん。
誰が好きって、もうたくさんいます。チームごとに何人かいます。それがすごいことだと思うのです。綺羅星のごとく、ってまさにそういう感じ。様々なタイプの選手がそれぞれに真摯なプレーをする。うー口で説明はしづらいですが、とにかく面白くてわくわくするんです。守備一つ見てても心が躍る感じです。あとねえ若者は若者ってとこがいいです。日本のように若者を無条件でありがたがったりしないで若者は所詮ぺーぺーなんです。ベテランたちはプライドを持って前に立つんです。それを緊張しながら尊敬する若者がいます。双方ともかっこいいと思う。いや勝手に想像して思うだけなんだけど。
とにかく来年も楽しみにしています。オフは寂しいなあ。日米野球は観に行ったよ。
Q17 最近観た映画で印象に残ったものはありますか?
 映画は新作系をちらほら観てるんですが(遅れてビデオで)いまひとつ不満の方がいつも多いです。バイオハザードも情けなかったし…どうしてゲームのあの怖さが出ないかな。やはり自分で動かすから怖いんだなあ。あ、そうだ今更だけど「17歳のカルテ」を観てこれは好きだったわ。アンジェリーナ・ジョリーはかなり好きです。
それからこないだ古いフランス映画観てそれは面白かった。ジェラール・フィリップの出てるやつ。古いのはあまり観てきてないから観ようと思ってます。
Q18 最近聴いている音楽は何でしょうか?
 エンヤとか。フジ子・ヘミングさんとか。相変わらず中島みゆきさん。
仕事中は歌詞のないものが多いです。
Q19 最近気になる男性タレントや歌手、俳優などはいらっしゃいますか?
 めっきりテレビを見なくなったので(ニュースとか以外は)あまり関心がないです。
もとからあったためしもないですが。みーはーに誰かにはまれないとこが自分のいかんとこだとは知っています。
MLBは楽しいけど。アレックス・ロドリゲスは誰と結婚したんだろうかとか考えたり………みーはーじゃん!

Q20 最後に、ファンの方々にメッセージをお願いします。
 いつも応援ありがとうございます。描く雑誌が変わってから結構経ちますが、まだ居場所が見つけられない感じで自分が透明になったような気がするときもあります。
でもなんとか頑張りますので、よかったらこれからも見てやって下さい。いつのまにか今年も残り少なくなりましたね。クリスマス、大晦日、お正月にどう過ごすか、誰と過ごすか、なかなか気がかりな時期ですが、皆様風邪などひかず、年末に向けて頑張りましょうー。楽しいこと、幸せなことがたくさんありますように。ありがとうございました。

田村先生、お忙しい中ありがとうございました!

次回のインタビューは吉野朔実先生です。
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